映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を見ました。亡き妻と再会したいがために、異世界の扉を開いて世界を破滅に導く父。その父親を阻止するべく息子が父親と対決する。『シン・エヴァンゲリオン』とあまりにもそっくりなストーリーに驚かされます。多分、偶然の一途とは思いますが、偶然の一致にしては興味深すぎる。
「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)に、アジア系でかつ、カンフーという肉体派のヒーローが誕生した! という意外性。アクション・シーンも、なかなか良く出来ていて、後半の特撮アクションよりも、前半のバスの中でアクションシーン×カーアクションの組み合わせや、高層ビルの足場でのスリリングな闘いは、なかなかの迫力。
お約束の父子対決。父親を倒して成長していくという、父性テーマまが入っているのは、樺沢的に大きくプラス評価。これは、安定したおもしろさといっていいでしょう。正直、マーベル映画はあまり好きではありませんが、正義をふりかざすような嫌みな描写もなく、普通に見られました。。
ただ、勘ぐってしまうのは、本作にどこまで「政治的」な風刺が盛り込まれているのか、ということ。米国におけるアジア系アメリカ人の増加や、中国市場(10億人以上)を意識して、アジア系や中国系を重要な脇役として登場させることは、近年、増えていましたが、ここまでの大作の「主役」というのは異例。
原作漫画の「シャン・チー」の歴史は古く、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』が封切られた1973年と、かなり昔に誕生しています。それが、なぜ今、映画化されたのか? 米中の対立がかってないほど深刻化し、火花を飛ばし合っている今。
ザックリ言うと、「息子が父親を倒す話」ですが、ネイティブの発音で英語を話す中国系アメリカ人(実質、アメリカ人)が、マカオに本拠地を持つ、世界中で暗躍する闇の組織「テンリングス」のリーダーである父親(どうみてもバリバリの中国人)を倒すという話とです。
さすがに「中国」という設定はヤバいと思ったのか「マカオ」に変えられてはいますが、一言で言うと「世界で暗躍する悪の権化、中国を米国人がぶっつぶす!」という話なわけ。
冒頭のシーンで、主人公である2人の中国系、ショーンとケイティが、早口の英語で冗談を言い合うシーンがありますが、どうみてもネティブ・スピーカーの英語で、アイデンティティとしては完全に「アメリカ人」として描かれています。
米中が有史以来最も緊張を強める中、よくこんな映画を作って公開できたな。さすがは、映画で大衆を動かすプロパガンダ映画が得意なディズニー映画、よくやったな! と感心するのです(笑)。
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