【映画の精神医学】４6 『おおかみこどもの雪と雨』～子育ての難しさと「つながり」の大切さ
子育てというのは非常に難しいものですが、父親がいないシングルマザーの子育てはさらにたいへん。そして、子供が普通の人間ではなく、「おおかみこども」だとしたら、もっとたいへんです。
『サマーウォーズ』の細田守監督の最新作ということで、非常に期待して作品を見ました。一言で言うと、非常に盛りだくさんの作品です。
ここに盛り込まれたテーマを思いつく順に列挙していくと、
シングルマザーの子育ての難しさ
父性不在を誰が代替するか？
「つながり」の乏しい都会で生きることの難しさ
ご近所さんとのつながり、地域コミュニティの大切さ
自然の中で生きる、自然との共存
自給自足、「食」の恵み
生きる、生命力
「社会」と「人間」
子供は勝手に成長していく
親の子離れ、子の親離れ
などです。
あまりにも盛りだくさんの内容で、見終わった直後に細田監督は何を描きたかったのか、すぐには理解できませんでした。整理して考えると、『サマーウォーズ』と同様「つながり」の大切さですが、「親子のつながり」や「地域コミュニティとのつながり」「自然とのつながり」にフォーカスが当てられていたことが見えてきます。
「おおかみこども」という奇抜な設定ですが、なぜ「おおかみこども」なのかといううと、別に「狼」でなくてもいいのかと思いました。子供の大切さを際立たせるためのスパイスが「おおかみこども」というだけで、人間の子供でもかなりの部分は成り立つ話なのだと思います。子どもというのは、そもそも「動物」や「モンスター」の部分も持っているわけですから。
『サマーウォーズ』が、大家族のつながり。家族の協力、結集の大切さを描いていたのが誰にでも分かるのと異なり、『おおかみこどもの雪と雨』は「多面体」の作品になっていいます。どこにフォーカスするかによって、全く違った作品に見えてきます。
子育てに興味のない人にはつまらないかもしれないし、実際に苦労されている、苦労した方にとっては、「そうだ、そうだ」というポイントがたくさんあるはずです。
私としては、今丁度、「父性」についての本を書いていることもあり、「父親不在」での養育。子供は父性不足をどこに求めるのか・・・というくだりに興味を持ちました。
父性不足は、子供を社会に引っぱり出す力の不足となり「不登校」の原因となりますが、案の定、雨は学校に行かなくなります。しかしながら、彼にとっての「父性的存在」を発見することで、彼の好奇心に火が付き、積極的に学ぶようになっていきます。
シングルマザーの子育て。母親が、「母性」と「父性」、両方の担い手としてうまくやっている人もいますが、母親が「父性」を担うというのは、なかなか難しい部分があります。ですから、誰か別な人に「父性」を担ってもらうというのが、子供にとってもわかりやすく、受け入れやすい。『おおかみこどもの雪と雨』においても、子供が家族の「外」に父性を求めることで、自分の進む方向性を発見していくのは、非常に説得力があります。
『サマーウォーズ』があまりにも傑作なだけに、『サマーウォーズ』と比べるというのも酷ですが、『サマーウォーズ』のようなシンプルさとストレートな盛り上がりがないぶん、多面的で複雑な魅力を持った、深く語り合うことで見えてくるテーマの深さを楽しむ映画になっていると思います。
シングルマザーの子育て 在 「シングルマザーの子育て（ジャスト）」岡村孝子 - YouTube 的八卦
「 シングルマザーの子育て （ジャスト）」岡村孝子. 42,362 views42K views. Apr 9, 2022. 330. Dislike. Share. Save. Jedi. Jedi. 16.1K subscribers. ... <看更多>